「いず、み」
「名前で呼べって言ったろ?」
「こ、すけっ、孝介、!」
「まあ名前呼んだってやめる気ないけどね」
「な、もうやだぁ」


あたしがそう言うと孝介は「イヤじゃなくてイイ、だろ」と言ってあたしの中に入っている指を曲げて、あたしの一番弱いところを撫でるようにさする。逃げるようにたじろいでも、孝介の膝の上に座ってるから腕で腰を上手いように押さえられて、頭を殴られるような快感からは逃げられなかった。


「ひぁ、あ、や、だめっ、やだこうすけ」
「イっていいよ」
「やだやだ!ぅあ、ひぅああ!や、こうすけ、あ」


頭の後ろら辺を揺さぶられるような痺れがきて、脳が縮み上がったのがわかった。そして解放。この脱力感に似た恍惚はどうしても慣れないし、少しだけ怖いと感じる。絶頂になるまでのジリジリと詰め寄るように追いあげる得体の知れない恐怖感や、一瞬頭が真っ白になって全てを手放すあの虚無感が、怖い。生理的に流れた涙が頬を伝うのが分かったけど、拭う気力も身体を自分自身で支えることもできなくて孝介に寄りかかったら、「泣くほど気持ちよかった?」と訊いてきた。ああ、昔はあんなに優しくて、いい子だったのに!あたしの孝介を返してよ!


「むかしは、あんなにやさしかったのに」
「あー、あれだよ。好きな子ほど虐めたいってやつ」
「そんな愛情表現いらない」


あたしがぶすくれてると、孝介はあたしの髪を撫でながら「もまんざらじゃなかったくせに」とキスしてきた。いやそうだけど、ってなに言わすんじゃ……!?


「もっと優しい人と付き合えばよかった」
「は?」
「栄口くんとか花井くんとかその他もろもろな優しい人ならよかったのに」
「……へぇ?」


孝介が背筋が凍るような冷たい声でそう言ったのをきいて、あたしは自分の失言に気付いた。やばい、大変にご立腹してらっしゃる。ぎぎぎ、と音が出るような仕草で上を見やると、孝介がそれはもう凍るような笑いであたしを見下ろしもとい、見下してました。目が笑ってないよ、泉くん。



「じゃあは栄口や花井のほうがいいんだ?」
「あのいや、そういうわけじゃなくてですね、」
「俺、結構愛を持ってに接してたんだけどなぁ、にはあんまり伝わってないみたいだけど」
「いやもう十分に伝わりました伝わってますだからもう本当ごめんなさい」
「本当はがきつそうだからやめとこうかなって思ってたんだけど、伝わってないみたいだからしょうがないよな」






泉があたしを押し倒しながら、楽しそうに微笑むのを見て、ああ明日は終わったなと思いました。






至福の微笑みに


甘美な 








やっぱり次の日、田島くんにからかわれるわ阿部くんには呆れられるわ花井くんには同情されるわ栄口くんには気を使われるわ水谷くんには笑われるわ三橋くんは分かってないわで大変な目に合いました。

070825 riyu kousaka