部屋に入ってみるとは部屋の真ん中で仰向けになって寝ていた。戸を閉じても差し込んでくる西日が眩しいのか、左腕で目を隠し、右手はだらりと畳の上に放り投げて。同室のはずの食満も委員会なのか今はおらず、だけがぽつんと部屋の中にいた。今日はい組とろ組は合同実技で学園にはいないから暇だったのだろう。




扉を閉めてのほうへと足を進める。本当に眠っているようだ。うっすらと開いていた口から息が漏れる音がして呼吸をしているのが分かる。その音と合わせて胸も上下運動をしている。ふと目をやると白い首筋が見えた。すらっとしていて細い首はなかなか日に当たらない為かの本来の肌の色のままの白さを保っていた。また細いのにその首はふっくらと滑らかな触感がしていそうで、思わず触れてみたいとそう思った。




そう思ったが最後で、気づいたときには僕はもうの首に手をかけてた。馬乗り状態でに跨り、その首にそっと慈しむように両の手をかける。やはり思ってた通り、柔らかく優しい触感のの首は、が今生きている証の鼓動を僕の両の手に知らせる。すーすーといった生命維持のための肺の運動も僕の手の中にある。僕があと少し力を込めてやれば、はあっという間に死んでしまうのだと考えると、人というのはあっけないものだなと思った。なんとなく、今のの表情がみたいなと、思った。




「伊作」




僕の手が震える。の声帯が震える。目を覆っていた左腕が少しずれ、隠れていたの目と僕の目が合った。




「まだ、死にたくはないよ」





その目は怒りではなく恐れではなく戸惑いでもなく、無表情だった。だから僕はがどう思ったのかが分からなかった。





「僕も、に死んでほしくないな」









白に帰る





070408 riyu kousaka